アブラゼミ 鳴く
暑い夏もお盆を迎えて、青空に浮かぶ白い雲が夏の終わりの様子を示し、
真昼の陽射しも心なしか少し優しくなったような気もします。
少し涼しいうす曇りの昼下がり、カメラを持って花よ蝶よと出かけました。
それでも歩き始めると、アブラゼミのお構いなしの、うるさい鳴き声が、
ジージー、ジジイと大汗をかいた身には堪えます。
もうこの時期になると、アブラゼミを捕る子もなくて、低い木の幹に止ま
って、鳴き喚いています。「しょうがないから撮ってあげるよ」と何枚か
撮っていると、すぐ近くの桜の葉の空蝉(うつせみ)に気が付きました。
空っぽの体の中に、うるさい鳴き声をいっぱいためているようですね。
三歩と散歩道
2016年 8月
Vol.143-sanpo2
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1: 2016年 8月 14日 長月への小道
アブラゼミ 鳴く
2: 2016年 8月 14日 長月への小道
アブラゼミ 鳴く
3: 2016年 8月 14日 長月への小道
空蝉(うつせみ)は 鳴き声聞いて
4: 2016年 8月 14日 長月への小道
聞いて 聞いて いつまでも
次の日は、朝からのんびり散歩。
水の江公園を抜けようとするとき、足元の道にアブラゼミの羽化途中の子が落ちているのに気が
つきました。「おいおい、ここじゃ踏みつぶされちゃうよ」と、そっと胸もとに止まらせ、少し
一緒に散歩することになりました。
涼しい風が吹く斜面の木陰について、「さてここでうまく羽が伸びてくれるといいね」と、木の
葉に止まらせて、頑張れよ!と声をかけて離れようとすると、左の2本目の手がゆらゆらと揺れ
て、挨拶しているようにも見えました。
二日後、朝の散歩で覗いてみると、何処にも姿が見えません。
うまく羽が伸びて、飛び立っていったのなら、いいんだが、どうだったのか。
5: 2016年 8月 15日 水の江公園はずれ
羽化途中で落ちていた子を 胸に
6: 2016年 8月 15日 村田川 番場
涼しい風吹く木陰の葉にとめて
この日は長月公園の清掃日。
朝9時から当番地区の人と落ち葉や枯れ枝拾いや雑草抜きなど小一時間汗を流します。
木立の中の落ち葉片づけをしていると、蝉穴がたくさん空いているところに出会えました。
団地が大きくなるにつれ、自然がどんどん減っていく中で、まだこうしてたくさんの蝉が地上に
出て、生を謳歌しているのは素晴らしいことです。
そうやって空に出た蝉は、暑い夏と輝く光の中で、大きな声で鳴いて、連れ合いを探して、短い
夏の日々を鮮烈に生きて、突然に地面に落ちて、仰向きになって生の終わりを迎えます。
暑い夏の短い日々の鮮烈な生と、潔い死がここにあります。
7: 2016年 8月 13日 長月公園
木の下には たくさんの セミ穴
8: 2016年 8月 20日 水の江公園
夏祭りの喧騒の中で 逝く